潮にのってきた彼女
が、当然そんなわけにはいかない。

起きて命の恩人にきちんとお礼を言い、時間を確かめ、できればもう少し彼女と話がしたかった。

大きくかぶりを振る。
無理やり腕に力を込める。


「あ……」


勢いをつけて上半身を砂から起こした時、彼女は小さく声を上げた。
反射的に彼女に視線を移して、俺はその理由を知った。


「驚いた、よね……」


放心状態の俺には、その声もはっきりと届かない。


浮遊感に包まれた意識の中、違和感だけがぽろぽろと形を崩していった。

目の色、髪の色、冷たい手、溺れた人間を1人で救った信じ難い出来事。

異常なほど冷静に判断が下った。


彼女は人間とは違う生き物


なぜなら折り曲げられた彼女の下半身は、エメラルドのうろこで覆われていたのだから。













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