シンデレラを捕まえて
穂波くんの瞳に、私はどんなふうに映っているのだろう。


深い黒が自分をじっと見つめているのを感じ取りながら思う。
どこがいいとか、好きだとか、印でも浮き出ているのかな。だって、穂波くんの指も、唇も、望んだところに触れてくれる。

私のことを知っている部分だってある、と彼は言ったけれど、その通りだ。私の知らない部分すら、彼は見つけ出してしまう。


「美羽さんの肌、やっぱすげえすき……」


その視線が、私の体の奥の熱情を煽る。瞳が動けば、体が震える。
引き締まった背中に手を這わせ、汗ばんだ胸板に縋る。

声を堪えようと思わず噛んでしまっていたらしい。穂波くんが小さく「んっ」と声を洩らしたことで気が付いて、口を離す。頭を、くしゃりと撫でられた。


「いいよ、噛んでて」

「ん……、……っ」


骨ばった指先が動くと、水音がした。その音が耳に届く前に、声が溢れる。
ぴんと張った穂波くんの背中に回した指先に力が入った。
溢れるものを、湧き上がるものを堪えることができない。幾度も寄せる波のような感覚にただ、溺れてしまう。
どうしよう。こんなの初めて、なんて陳腐な言葉を吐いてしまいそうになる。だけど、こんなにも我を失ったことってない。


「もっと俺の方見て。そのとろんってした目、すげえすき」

「は……、ん……っ」


最初の夜と同じ、密度の濃い夜。
時間の感覚を失った挙句、私はまた、力尽きるようにして眠りに落ちたのだった。


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