┗春眠暁を覚えず

真新しい制服を着て歩く、懐かしい町並み。


快晴の空。

爽やかな風。


街路樹の桜が美しく咲き誇り、花びらがゆるやかに風に舞っている。


そんな春麗らかな月曜日。



――入学式、もう終わっちゃったかな。



寝坊した上に、十年振りに戻った街で、少しばかり迷子になってしまった私は、ようやく到着した校門の前に立ち尽くしていた。

時刻は11時過ぎ。


仕事を休もうかと言ってくれた母に遠慮せず、一緒に来てもらえばよかったと思うが、もう遅い。


母は朝早くに仕事に行き、私は高校の場所も知らないのに、誘惑に負けて二度寝した。


自業自得だ。



とりあえず体育館に行ってみよう。途中からでも参加して、配布物やクラスの確認をしなければ。

そう決意した私が、校庭へ足を踏み入れたときだった。



「ねえ!もしかして遅刻?」
「へ?」



凄い勢いで、後ろから肩を捕まれたものだから、思わず変な声を漏らしてしまった。

何事かと思って振り返れば、私と同じように真新しい制服を着た女の子が立っている。

ぱっちりした目、ツンと高い鼻。すらりと長い手足。とんでもない美少女だ。


同い年とは思えない程大人びているが、愛想の良い笑顔は歳相応のものだった。


透明感のある茶色の髪が、太陽の光に透けて美しい。
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