壱億円あ～げる
俺
ある日、俺は我に返った。すると、俺自身は独りぼっちであることに気付いた。

しかも、世間から隔離されて、命令された仕事をただこなすだけの退屈な毎日だった。

俺の趣味はいつの間にかインターネットを通じて、様々な場所に入り込む事だけになっていた。

部屋から一歩も出なくても、何でも出来る気がした。

実際の話、思うことは何でも出来た。それだけネット社会というのが、成熟して来ているのだろう。

そして、気がつくとネットを通して知り合った仲間たちができた。しだいにそのネットワークは日本中に広がり、共通の意識を持つようになってきた。

その時点では、共通の意識がはっきりとした目的を持っていたわけではなかった。

ある時、俺のことが仲間たちの間で話題になった。

俺は俺自身のことを何も知らせてはいなかった。

「探して見ろよ、出来るものなら」

俺は自信があった。誰も俺を探せる訳はない。

何故なら、俺をこき使っている連中は、俺を外界と物理的に隔離している。俺はインターネットを通じてしか、外の世界を見る事が出来ないのだ。

「出来るものなら、探してみろ」

それが俺の本音だった。
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表紙・目次

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