CRIMSON EYESIGHT ~prologue~



「何してんだよ。お前…」



彼が呆れたようにこちらを見ていた。


狭い家の中は、すぐに玉子焼きの焦げた臭いで包まれた。



「んー。少し考えごとしてた?」



自分でもよく分からなくて、無意識の内に質問に質問で返してしまっていた。


そんな私に、彼は哀れみの眼差しを向けていた。


ああ、そんな目で見ないでよ…



恥ずかしくなって、焦げた玉子焼きを菜箸で突つく。


そんなことをしながら、今日のお弁当のおかずをどうしようか考えた。


気づけばパンも焼けている。



今日だからか。


どこか、抜けてしまっている。


変わり始めるであろう今日だから…



朝から玉子焼きを焦がすという大失敗をしてしまって憂鬱な気分だったが、それからはたいして大きな問題もなく。



(小さな失敗はたくさんしたけど…その度にジンには哀れみの眼差しを向けられたけど…)



いつものように彼と一緒にご飯を食べて。


いつもの時間に、今日が最後になるであろう我が家から外に出た。



「今日で、最後……だから…ね」



私の小さな呟きは誰にも届くことはなく…



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