雨音に隠した残酷
残酷の真実


その日の灰色の空は、一日中雨粒を地上に落としていた。





梅雨入り宣言から1週間。

降る量は日によって様々だけれど、この最近で雨が降らなかった日はない。

昨日は昼頃から急に降りだした。天気予報では夜から降ると言っていたのに。

それに比べて今日は予報通り、朝からずっと雨降りだ。予報は当たっても、これはこれで嬉しくとも何ともない。

一日中降り続けるなんて、雨雲もなかなか酷いものだ。
おかげで窓を閉めきった教室には湿気が充満していて、肌に纏わり付く感じが心地悪くて仕方がない。

おまけに癖毛のショートカットも纏まりが悪く、うねうねした上に広がっている。
朝にムースで整えてきたというのに、放課後になる頃には何の効果ももたらしていなかった。

天然パーマなんて上手くセット出来ない限り、ただの厄介者だ。


「先生! 旦那さんには何てプロポーズされたんですかー?」

「えー、恥ずかしくてそれは言えないよ~」


窓の傍に立ちそびえている大樹の葉が雨に打たれる様子を見ていると、教卓の前に出来た輪が盛り上がっている声が聞こえてきた。

輪の中心に居て生徒に囲まれているのは、このクラスの担任の美保(みほ)先生。
ついさっき終わったホームルームで結婚報告をしたので、ちょうど生徒達に質問攻めにあっているところだ。


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