*Promise*~約束~【完】

罪人




「というわけで、俺たち皆元犯罪者でーす」

「ちょ、ちょっと待って。全然頭に入らない」

「えー。じゃあもう一回説明しよう!」



ある日の昼下がりのこと、リオはエリーゼに言われた通りライナットとルゥたちとの関係を聞いた。

なぜそんなにも尊敬しているのか。

それは、彼らの知られざる過去に理由があった。


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ーーー



俺たちは昔、罪を侵して牢屋に容れられていたんだ。まだ子供だったから死刑にはされず、刑務所で労働をしてたんだよねー。

よくあるじゃん?服作ってたり何かやってたりさ。このバドランの場合は言ったように服作りだった。

ミシンでガガガガガガって。ただそれだけ。それを毎日続けてたんだ。


罪を侵したっていうのは、盗みだったり殺害だったりで、重くても軽くても同じ刑務所に収容された。もちろん牢屋も一緒だよ。

大人とは別にされて、未成年だけ隔離された。そして、成人になったときに釈放されることになってる。だから、幼ければ幼いほど収容期間が長いってわけで、俺の場合は七歳だったから本当は十年間も収容されるはずだった。


俺の罪?もちろん盗みさ。だから屋根裏は俺のテリトリーだし、怪盗なんちゃら!って感じだったね。

まあそれが得意だったから、刑務所の屋根裏にも行ったことがあったんだけど……失敗した。屋根裏は棘だらけで、俺は血を流して泣きながら元の牢屋に戻った。

そんな俺を見張りは嘲笑ったね。もう爆笑。

俺は頭に血が昇って掴みかかったけど、鉄格子があったから無理だった。それをさらに笑われて、俺は惨めな気分でいっぱいになった。


小さくなっていっさいの音を遮断しているときに、ライナット様が現れたのさ。

見張りはいつの間にか気絶していた。それは後ろからダースが拳を入れたからだっていうのは後に知ったんだけどね。

んで、そんときのライナット様は九歳じゃん?それに貴族っぽい格好してたから俺をからかいに来たんだと思った。こんなやつが俺に何の用だって苛立った。

だから牢屋の鍵を開けて入って来たライナット様に俺は掴みかかったんだ。ライナット様は抵抗せず床に倒れた。そんときの床の冷たさをよく覚えているよ。


痛さと惨めさと悔しさに押し潰されてた俺は、ライナット様をそのまま殴ろうとした。でも、ダースに止められた。

もがく俺を無表情で見つめながら、ライナット様は手を差し伸べながら言った。



『俺はライナット=バドラン。この国の第三王子だ』



それを聞いて俺は驚いた。でもすぐには信じられなかったね。だって王子だぜ?こんなひょろひょろとしていていかにもひ弱そうなお子ちゃまがだぜ?

俺は自分の歳を棚に上げてそんなことを思ってた。

まあ、つまり馬鹿にしてたんだ。



『おまえはこの国を恨んでいるか?たったの盗みだけで牢屋に十年はキツいだろう』



その言葉で、俺のことを全て知っているんだと確信した。そうしたらあながち王子なのは嘘じゃないかもしれない、と抵抗するのを止めたんだ。でも、まだ警戒は解けなかったし、もしかしたらダースがいなかったら首を締めていたかもしれない。

とにかく、むしゃくしゃしてた。



『ここから出してやる』

『え……?』

『俺を殺したいのはわかっている。バドランが憎いのだろう?その国の王子となれば価値観が違うだろうな。だが、この国と俺の本質を見てから殺せ』

『本質……』

『本当に、滅茶苦茶にしていいものなのか。それを約束してくれるならここから出してやるし、自由を与えてやろう。ただし、俺の部下となり働いてもらうがな』



これが九歳の言葉か?っていうぐらい凛としててかっこよく見えた。俺はそのとき決めた。

一生仕えると。だからその手を取った。


牢屋から出してくれたライナット様は、俺にとって尊敬する人になった。出してくれただけじゃない、その心の広さに感銘を受けたんだ。

他にも俺のようなごろつきが北の塔にはいてさ、皆強いんだ。這いつくばってでも生きる術を知っているような人たちだった。


ライナット様がどうして俺たちみたいなやつらを集めているのはかわからないけど、護衛としては完璧だと思う。

ごろつきを年上も年下も関係なく引き込んで部下にする姿を見ていると、何かのためにしているようにも見えたな。

それが何なのか、俺にはまだ見えてこないけど。


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ーーー



「その言葉……殺せってやつ……」

「聞き覚えがあるだろう?俺たちは皆、ライナット様を殺す許しが出ている。でも誰もしないのはなぜか?それはライナット様が素晴らしいお方だからだね」



あの人は情に厚いから、とルゥは遠い目をした。

リオにはそれがわかるような気がした。彼には人を惹き付けるような何かを持っている。


だから、好きになったのだけれど。



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