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「こんなことしたって無駄ですよ。離れてください」

「いや」

「僕の心は変わりませんから。僕は彼女を迎えに行きます」

「そんなのダメ」

「じゃあ、力づくで離しますよ?」

僕は怜奈の両肩に手を添えて無理やり引き剥がすと、そっと押し飛ばした。

怜奈は転ばなかったものの、ふらついて僕を睨んだ。

「怜奈さんが何をしたって僕の心は絶対に手に入りませんよ。わかってください」

「こんなことして、父に言ってやるから」

「何をですか?」

「篠原君に酷いことされたって」

「僕は酷いことなんかしてないですよ」

むしろ酷いことをされているのは僕の方だ。

「後から私と付き合えば良かったって思っても遅いんだから」

「そんなこと思いません。もう二度と来ないでください。あ、鍵返してください」

怜奈はまだ睨んでいた。

体を使った作戦で僕を落とせなかったから、腹が立っているんだろう。

プライドが許さないんだろうな。
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