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突然、携帯電話の音が鳴った。

和馬は箸を置いて携帯電話を手に取ると、着信画面を見て人差し指でコツコツと叩いた。

「師匠だよ」

私が目を大きく開いて不安な顔をすると、和馬はニヤッと笑った。

きっと怜奈さんが何か言ったんだと思うけど、どうして和馬はそんな風に笑っていられるほど余裕があるんだろう。

「はい、篠原です。はい……、えっ?とんでもない、そんなことはありません」

なんだろう。

怜奈さん、何を言ったんだろう。

あの怜奈さんって、滅多にお目にかかる機会のないようなステレオタイプのお嬢様だった。

お父さんのことを『お父様』とか言ってそう。

「ええ、はい。……いやいや、あり得ません。むしろ迷惑かけられたのはこっちですから」

え!そんな言い方しちゃって大丈夫?

師匠なんていうからには、ものすごく偉い人なのでは?

和馬はオロオロする私から視線をそらさず、じっと見たまま話していた。

「ただ嫌いって言っただけですよ。怜奈さんは僕にとってたった一人の、この世で一番大切な人を傷付けて追い出したんです。許せません」

ずっと目があったまま、和馬は恥ずかしげもなくさらっと言った。

私は和馬の強い視線に照れてしまって、頬が熱くなっていくのがわかった。
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