形なき愛を血と称して

「願い一つ、一つ叶えば、こちらも一つ」


湖を沼地(黒)にさせる“モノ”は言う。

湖いっぱいに広がった不定形な体は黒。
ゆらゆらと漂い、湖に寄生してきた“モノ”だったが。

「こちらを与えた。そちらも与える」


黒い縄状の物が、羊を縛り上げ、湖に引きずり込む。

鳴き声ごと喰われる体。
バシャバシャともがく波紋も数秒で沈黙する。

ややあって。

「次は誰?次は誰?」

湖から這い出る、一匹の羊。

白から黒へ。沼地の色を全て取り込んだ毛色をした羊が、地を踏んだ。

「願い一つ、一つ叶えば、こちらも一つ。ーーカウヘンヘルム、カウヘンヘルム。一つ叶えた、こちらも一つ。まだ、まだ」


悪魔の羊が向かうは、カウヘンヘルム家の土地。

反故にされた契約を、遂行するがために。


「次こそは。次こそは」

必ずと。数年程度では紡げない怨嗟を羊は漏らすのだった。



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