形なき愛を血と称して

「なら、あの可愛いーー」

「ラズに消化されたいのか」

有無も言わさずに却下。冗談すらも通じないとは、リヒルトの顔から察せる。

「んもー。余裕ない男ねっ。そんなきゃわいい子がいないじゃないの!今日はあの子に似合いそうな物を持ってきたのに!」

フリルだらけの服を広げるフローリデには、もうちょっとで帰ってくるよと話す。


「今まで、森の方には行けなかったからねぇ。もっと色んな場所を見てみたいと、お出かけ中。この前、野ウサギと友達になったとか言っていたから、それと遊んでいるんじゃない?」

「ちょっと前のあんたなら、自分のそばから離れさせることも嫌だったのに、随分な変わりようねー」

「なるべく、トトちゃんの好きなようにさせたいと思って。ただーー」

途切れた言葉は、扉が開いたからだった。

ただいまもそこそこに、家の中にいたトロールならぬフローリデに悲鳴上げる手前、トトの体はリヒルトの腕の中にあった。

「お帰り、トトちゃん。遅かったねぇ。何していたの?じっくり聞くから、一から話して」

「あ、あの、リヒルトさん。ふ、フローリデさんがいるんで、はずかし」

「気にしなくていいよ。あんなの壁とでも思えばいい。そうだ、喉渇いているだろう?血、飲む?」

「の、飲みませんよ!痛いのはダメです!」

「冗談だよ。トトちゃんに言われてから、もう自傷しなくなったから。あ、冷蔵庫にアセロラシェーキあるから飲みなよ。甘いもの好きだものねぇ」

甘いものと聞いて、子供のように嬉しがるトトは、冷蔵庫へ。ほんのり赤いシェーキを美味しそうに飲むさまを、リヒルトは満足げに見つめている。

「あんた、あれ……」

「体を壊すほどの量ではないし、注射による採血は自傷行為ではなく、トトちゃんに栄養満点なものを美味しく飲んでもらうことに、何か問題でも?」

全てを理解したフローリデには、黙する選択肢を選んだ。あくまでも、彼女は吸血鬼。いくら混血で普通の食事も摂取出来るとは言え、体は衰えていく。飛ぶことも出来なかった昔に戻ることもないだろう。

「リヒルトさんっ、すっごく美味しいです!リヒルトさんも飲みますか?」

「僕はいいから、トトちゃんが全部飲みなさい。ああ、あと、ラズが治ったよ」

遅ればせながらの発表に、トトは目を丸くする。

吠える犬を見た一秒後には、丸くなった目が涙でいっぱいになる。

「ラズ、ラズぅ……。へいき、なの?だ、大丈夫?」

「ワン!」

「本当に腐ったレモンにはもったいないほどのいい子ねー」

素直な子だわ、と言うフローリデには、笑っておく。

「確かに僕にはもったいないほどのいい子だけど。彼女は僕を愛していると言ったからねぇ」

トトの名前を呼ぶ。
何ですか?と駆け寄ってくる彼女は、“リヒルトの前に立って”。


「僕は君を、幸せに出来ているかな?」

彼の前で、マリーゴールドが大輪を咲かせる。

「はい!大好きなリヒルトさんのそばにいられて、幸せです!」



枯れることがない美しさに祝福と愛情を。
同じ愛を持って、彼女に応える。
形なき愛だからこそ尽きること知らず、彼は花(愛)を育み、彼女は幸せを生んでいく。互いの心を相手で満たしながらーー











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