春河家は今日もドタバタです。

船内が大きく揺れると同時に、すさまじい風がそこにいる者達を飲み込んでいった。

「ごめん、遅くなった。」

黒髪の男が彼らの間に割って入るように立っている。悪びれる様子もなく、その男はいきなり祇儀を睨み付け「さいなら!」といった瞬間突き飛ばす。危険を察した清澄が止めに入ろうとするが身体が動かない。その間に、祇儀は思いっきり壁に叩きつけられる。

「大王様!」

壁にめり込んでいるという状態の祇儀。それを見つめることしか出来ない清澄の胸倉を掴むと「うるさい。」といいながら、男は清澄を床に叩き付けた。

「牽制逆転だな。」

不敵な笑いを浮かべる涼香。しかし、そんな時間は一分も続かなかった。

「それはこっちの台詞だべ。」

涼香の振り向いた先には、眠る椿を抱える緑涼の姿。そして視界を周囲に向けると、禮漸が瀧蒸を、風燕が骸を、火燐が光を拘束している。

「涼香君、後ろ!!」

尚澄の高い声が船内に響き渡った。その声で後ろに振り向いた涼香の身体中に鈍い痛みが走った。

「まだ若いねぇ、周りをきちんと把握してないと死ぬよ。」

日本刀を持った蓮流がそこに立っている。睨み付けながら「はぁ?」と話す涼香。そんな彼に目線を合わせる蓮流は「みねうちだからから安心しな。」と笑顔で話す。そして涼香の頬に思いっきり拳をねじ込んだ。

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