ウェディングドレスと6月の雨

 運転席の神辺さんは嬉しそうに微笑んでいた。でも、穂積さんの様子を聞くのは、穂積さんの最近の様子を知らないから?

 信号機待ちで車は止まる。


「知ってると思うけど私、穂積くんと」
「はい。噂は聞いてます」


 そう、私たちって有名なのね、と自嘲するように呟いた。


「でも」
「別れたって本当ですか?」
「ええ。本当」
「でも噂ではまだつながってるって……」
「え?」


 神辺さんは本当に驚いたようだった。


「今回のコンペも穂積さんがプレゼン担当で、本社から指名されるのは神辺さんが絡んでるって……」
「今回?」
「違うんですか?」
「7月のコンペは本社のツテだから穂積くんの名前も出たけど、今回のはコンペがあることすら知らないわ」
「じゃあ、本当に……?」
「本当よ。支社のコンペまで人事部は関与してないわ。それに前回のコンペだって、最終的に決めたのは本社営業部の筈よ」
「え……本当ですか?」


 私がそう言うと神辺さんは頷いた。外でクラクションが鳴る。信号が青になっていた。神辺さんは慌てて車を発進させた。神辺さんが誤魔化すのに嘘をついたと言えないこともない、でも、そんな風には見えなかった。

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