ウェディングドレスと6月の雨

 そうして、サンドイッチを作り終えたときには7時を過ぎていて、買ったばかりのピクニック用の大きなボックスに詰め終えたときには8時。それも何度も詰め替えてるうちにサンドイッチのカット面がズレてしまったり。お湯を沸かしてポットに入れて、おしぼりやカップ、スプーンを用意し終えたときには9時。慌ててシャワーを浴びて髪を乾かしてお化粧をして。予め用意していたクロップドジーンズとパーカーを着たら、もう9時半。腕時計、帽子、ピアス、日焼け止め、レジャーシート。玄関に溢れかえるモノ、モノ、モノ。

 鞄から聞こえる電子音。スマホの着信音。腕時計を見れば10時5分。勿論相手は穂積さん。


「もしもし、ごめんなさい! すぐ下ります」
「いや、慌てなくていい。大丈夫か?」
「はい。あの、荷物がいっぱいで」
「荷物? なら取りに行く。何号室だ」
「205号室です、階段を上って一番奥のドアです」
「分かった」


 通話を切り、靴下を履いてスニーカーを履く。すると、コンコン、とドアを叩く音がした。


「はい」
「開けていいか?」
「……はい」

< 197 / 246 >

この作品をシェア

pagetop