6月の恋人
帰り道、玲は自分のパスしたボールが僕に直撃した事を心配して久しぶりに一緒に帰った。

家は近いはずなのに、玲はいつも部活の後は用事があると言って家とは逆の方に帰っていた―。

だから、今日は少し照れくさかった。

「…何?」

僕はそんなに玲を見ていたのかと思うと顔が真っ赤になった。

「い、いや!何か久しぶりだなぁってと思ってさ…。」

玲はふっと優しい表情になると「そぉ?」と笑った。

「葉瑠さ…、最近ボーっとしてなかった?」

「あっ、バレてた?なんかさー玲に好きな人がいるって噂で聞いちゃってさ…はは。気になってね~!!」

「…気になる?」

真剣な顔をする玲に、余計な事を聞いてしまったと思っていると、玲は続けた―。
「たぶん、その人は知らないけど、心から好きなんだ。」

「ごめんな。なんか無理やり聞き出したみたいで。」

僕は謝った。あまりにも切ない顔を玲がしてたから―。

「いいんだ。葉瑠に言おうと思ってたから…」


ポツリポツリと濁った空から雨が降り出していた―。


玲は僕を家まで送るといつものように笑って帰って行った。








―それが、玲との最後の別れだった。




その夜に家に入った電話は信じられない内容だった。
心臓が悪いのを隠して部活を続け、しかも雨にうたれて帰った事で玲の心臓は悲鳴をあげ、発作が起きたのだという。

そして、絶対に葉瑠には言わないで欲しいと言っていたらしい。


どうして…どうして…?


答えは闇に沈んだ僕の心には出せはしなかった。



どうして…?

僕はそんなに頼りないのか…?
玲…教えてよ。
ねぇ?玲…。

雨は僕を包み込むように降り続いた…。


雨は、玲を思い出す。何も出来なかった僕を許してくれる?


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