引き立て役よさようなら(番外編追加)
優花はそのまま店を出た。
これ以上一緒にいたらきっといろいろな事を聞かれる。
自分は顔に出ちゃうから
そんな悩みをもったまま達央の前には出れないと思った。

時計を見ると優花は走りだした。
早く家に帰って達央からの電話を待つ。
誰にも聞かれたくない。
二人だけの会話は誰もいない自分の部屋がいいのだから

優花の中に川久保はいない。
今仙台で多くファンの前で歌を歌ってる達央しかいないから・・・

家について30分くらい経った頃

電話が鳴った。
もちろん相手は達央だ。
「今ライブ終わった」
「お疲れ様」
「すっげーよかった。初日でガチガチだったけど。
最高!あ~~優花をぎゅーってしたい」
「ふふっ♪じゃ~帰ってきたら・・・・ね」
「帰るよ帰る。明日すぐ帰る。会える?」
「うん。」
「浮気なんかしてねーよな」
一瞬ドキッとした。でもあれは浮気じゃない。
「浮気はしてないよ」
「・・・・は?ってどういうこと?」
「お客さんにね、私の事が好きだったっていわれたの。」
本当は私の事昔好きだったって言われたのと言いたかったが
敢えてやめた。
「マジかよ・・・・で?」
「それだけだけど・・・」
「は?」
いまいちよくわからない達央はもっといろいろと聞きたそうだったが
それだけと言われたらもう聞けない気がしたようで
「だから私には達央さんしかいないから・・・それだけ」
「・・ほ~~。そうなんだ・・・」
正直腑に落ちない点はあるがそれは帰ってからじっくり聞こうこうと諦めた。

電話を切るとふと高校時代を思い出した。
川久保との事・・・
もしかしたらあの時本当は川久保の事を好きだったのかもしれない。
優花をちゃんと見て対等に話してくれる川久保にドキドキしたのは事実だったから。
だからもしかしたらあれが初恋だったかもしれない・・・
でもあの時は本当に人を好きになることが怖かったし、友達の陽子も彼に夢中で
認めることが出来なかったのだと思う。

でもこの事は秘密にしておこう。
今日、川久保に会った事も
高校時代の甘酸っぱい思い出も・・・
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