引き立て役よさようなら(番外編追加)
この男は優花がつまらなさそうにビールを飲んで誰とも話をせず
ひたすら食事をしていたのをずっと見ていたらしい。
優花は恥ずかしさのあまりうなだれるように膝に顔をうずめた。
「どうせ、人数合わせに呼ばれたってーとこ・・でしょ?」
「そうですよ。私はみんなの引き立て役で毎回合コンに呼ばれるんです。
私の横に座れは自分が引き立つ様で・・・・そんなことわかってて参加するんだから私も馬鹿ですよね。
こうなることはわかってるのに・・・」
優花は顔をうずめたまま隣の男に本音をぶつけていた。
「本当に馬鹿だね。」
つぶやくように男は優花を見つめた。
その言葉にうずめていた顔を上げ男の顔をみた。
「自分でバカって言うのはいいけど、人にバカって言われるのは
気分がいいもんじゃないですね。」
優花と男はここで初めて同じ目線で顔をみた。
そして何だかおかしくなって同時に笑った。
「それはいえてるね・・・ところであんた戻るの?合コン」

戻りたくない。

今戻ったって時間つぶしのためとはいえ、もうお腹もいっぱいで
食べる気もおきない。
「帰ろうかな・・・・」
ぼそっとつぶやいた。
「じゃあ、俺も帰ろうかな・・・」
そう言うと男は先に立ち上げり優花の腕を掴んで立ち上がらせた。
「い・・・いいんですか?帰っちゃって、誰かと一緒だったんでしょ?」
優花の問いかけに男は溜息をつきながら
「ああ?俺はああいう連中と仕事はよくても一緒には飲みたくはないね。
・・・・それにアイツらがいるから俺が抜けても大丈夫でしょ~~」
一体この男はどんな人と飲んでいたのだろう・・・と思いながらも
優花は男と一緒に店を出た。
< 6 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop