引き立て役よさようなら（番外編追加）

連れて来られた場所は、さっきまでいた居酒屋から徒歩１０分ほどの
場所にあるバーだった。
雑居ビルの地下にあるバーはまるで人目を避ける様な作りで店の看板もない。
階段を下りるとずっしりとした木製のドアがあり、男が扉を開けてくれたので中に入った。
「す・・ごい」
思わずつぶやいてしまった。
店内はまるで西部劇に出てくる飲み屋をそのまま再現したかのような
作りで、バーカウンターと丸いテーブルに椅子が並べられていた。
こんなお店、優花にとって初めての場所でどうしたら良いのかわからず
その場から動けなくなっていた。
「おい・・・」
「・・・」
「おい！」
やっと自分が呼ばれていたことに気がついた優花はキョロキョロろ声の主を
探す。
男は既にカウンター席に座ってバーテンダーに何かをオーダーしている様だった。
優花は慌てて男のいる場所へと移動した。
横に座るとバーテンダーにおしぼりを渡された。
このバーテンダーも口ひげを蓄えて、映画に出てきそうな人だった。
「ねーあんたはなに飲む？さっきの感じだと結構飲めそうだよね。」
「一応飲めますよ。人に迷惑かけない程度にですけど・・・・」
男はふーんと返事をしたが、聞いているんだか聞いてないんだかよくわからない。
優花はバーテンダーにジントニックを頼んだ。
間もなくカウンターに２つのお酒が差し出された。
優花はジントニック、男はオールドファッションドだった。
「とりあえず乾杯でもしとく？」
男が自分のグラスを持ち、優花の方にグラスを差し出す。
「せっかくなので・・・乾杯しますか」
でも何に乾杯するんだ？と優花は思ったが聞く前に
男が勝手にグラスをカチンと合わせたので
優花は慌てながら小声で乾杯と言って一口飲んだ。