私がお嬢様をやめる時
いつも訪れる店に来た。
私はこのブランドの靴しか履かない。
家のシューズクローゼットは
まるでこの店のディスプレイのように
ここの靴が何十足と並んでいる。

1足数十万もする靴の数々。
私は靴には妥協しない。
素敵な靴を履くだけで
その日がとても晴れやかになるから。



「水嶋。」


「はい。」


「選んで。」


「承知しました。」

どうせまた私が選んで
流行色がどうとか言って
ダメ出しされるくらいなら…


水嶋は店内を物色し始める。


私はそんな水嶋を目で追う。
ふと店員達を見ると
靴を選ぶ水嶋に見とれていた。
それもそうか。
水嶋のタキシード姿は様になっている。

こんな若くて顔立ちのいい執事
そうそういない。
大体仕事のできる執事は
ベテランのおじさんやおじいさん。
そう考えると水嶋が執事でも悪くない。


「こちらを。」


水嶋は自ら膝まずき
私の靴を脱がせそっと履かせた。


水嶋が選んだのは
高いヒールのシンプルなベージュの靴。
シンプルだけど
フォルムがものすごく私好み。

水嶋は私の好みを完璧に把握している。
服装だけじゃない。
メイクもヘアスタイルも
私が口にするものも…
プロって
こういう人の事を言うんだと思う。


私は色んな角度から
履いた靴を確認し


「これにする。」


即決した。
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