私がお嬢様をやめる時
笑ってくれないし会話だって弾まない。
だけど
いつもそばにいて
私のことを誰よりも理解してくれる。

どんなに素敵な人に告白されたって
必ず水嶋を思い出して
考えてる自分がいた。

実際、恭平と初めて出かける日だって
頭の中にいたのは水嶋だ。

私が知りたかったのは
私にもし彼氏が出来たら
水嶋の態度は少しでも変わるのか。

でも、悲しいことに
水嶋の態度は1ミリも変化しなかった。
水嶋は私がだれと付き合ったって
関係ないんだ。

水嶋にとってはただの仕事上の主。
だから私はこんな叶わぬ恋から
早く卒業しなきゃいけないと
思っていた。

恭平と付き合って
水嶋とは
ただの主と執事という関係のまま
そばにいようと思っていたのに
恭平の一件で、また私の傷ついた心に
水嶋が入り込んで来た。

私はお父様を憎んでいる。
あの家に一人にしたこと。
そして
私にあんな執事を与えたこと。

水嶋に素直になれないのは
そんな私の気持ちも知らず
淡々と仕事をこなす姿が
腹立たしいから。
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