幸せの花が咲く町で




「おばちゃん、こんにちは!」

「小太郎ちゃん、おかえりなさい!」

「篠宮さん、こんにちは。」

「こんにちは。今日も良いお天気ですね。」



次の日も、いつもと同じように、幼稚園帰りの小太郎ちゃんと堤さんが声をかけて下さった。



「昨日はどうもありがとうございました。」

「こちらこそ、どうもありがとうございます。」

これといってなんてことのない会話……
だけど、そんなことでも心は弾む。



「堤さん!」

道路の向こう側から手を振るのは、翔君のママだった。
翔君とママは道路を渡り、私達の所へ走って来た。



「今日は隣町の大型スーパーに行くつもりなんですが、良かったらご一緒にいかがですか?」

私も一応知ってるだけに会釈をしたけれど、翔君ママは私の存在なんかまるで見えてないみたいだった。



「わぁ、僕、行ってみたい!」

「今日は家でDVD見るんじゃなかったのか?」

「スーパーに行ってから見る!」

「小太郎君もこう言ってますから……」

堤さんは小太郎ちゃんの顔を見ながら、じっと何かを考えられているようだった。



「それじゃあ……申し訳ありませんが、小太郎だけ連れて行って下さい。
着替えたら、お家まで連れて行きますので……どうぞよろしくお願いします。」

堤さんはそう言って軽く会釈をされると、小太郎ちゃんを連れて歩き出された。



今はまだ人付き合いを煩わしく感じるっておっしゃってた。
人の多い所が苦手だとも……
だけど、そのせいで、小太郎ちゃんをどこにも連れて行けなかったことを堤さんは悔やまれてたから、それで、小太郎ちゃんだけを行かせることにされたんだろう。
しっかりした感じはあるけど翔君ママは若い感じで、肌なんてつるつるで……多分、まだ二十代だと思う。
そのことも堤さんは少し苦手に感じられてるみたいだ。


< 203 / 308 >

この作品をシェア

pagetop