幸せの花が咲く町で
「なっちゃん、どう思う?
花屋のオーナーは、篠宮さんに僕の家には行かないようにとかなんとか言ったと思う?」

「そうだね。
そんなことで文句言って来られたら……一応、香織さんにも話すとは思うよ。
でも、香織さんが本当にそんなことをする人かどうかは山野さんだってわかるはずだし、おかしな誤解をされないように、もう行かない方が良いとは言うかもしれないね。」

「そうだよね。
篠宮さんは結婚してるんだし、しかも、真面目な人だ。
そんなことするわけないってわかるよね。
ねぇ、なっちゃん……山野さんに訊いてみてよ。
篠宮さんに伝えたかどうか……」

「うん、わかった。
近いうちに訊いてみるよ。」



本当に思いがけない話だった。
これが、すべて真実だとしたら……
篠宮さんが、うちに来なくなったのが翔君ママのでたらめな告げ口のせいだとしたら……
篠宮さんの態度が変わった理由がわかる。



衝撃的な話だし、ありもしないことを疑われて憤りも感じたけれど、その理由がわかったことは少し嬉しいようにも思える。
篠宮さんは僕のことを嫌っていたわけではなかった……
そう思うだけで、気持ちが軽くなった。



でも、そんな気持ちはすぐにどこかへ吹き飛んだ。
何を考えてるんだ……せっかく篠宮さんを忘れる決心をしたっていうのに……



篠宮さんがうちに来なくなったことに理由があろうとなかろうと、そんなことはどうだって良いことだ。



(僕が、自分の気持ちを諦めなければならないことには、何の変わりもないのだから……)



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