幸せの花が咲く町で
「堤さん……私、堤さんにずっと嘘を吐いてました。」

「嘘……?」

堤さんの表情が急に強張ったものに変わった。



どうしよう……
怖さが一気に増した。
だけど、ここまで話した以上、止めるわけにはいかない。



「は、はい。
私…………本当は結婚なんてしてないんです。
いまだにバツなしの独身です。
母と私の二人暮らしなんです……」

堤さんは酷く驚いたような顔をして、私をじっとみつめてらっしゃった。



「本当にごめんなさい。
つまらない嘘を吐いてしまって……
私……もうこんな年だから、どこか恥ずかしかったんです。
独身だっていうのが恥ずかしくってそれで……」

「でも、篠宮さん……
僕は見たんですよ。
小学生くらいの男の子が、あなたのことを『かーちゃん』って呼ばれるのを……」

夏美さんと同じことを言われてしまった。



「それは、きっと山野さんのお子さんのサトシ君のことだと思います。
サトシ君は、私のことをかーちゃんって呼ぶんです。
私の名前が香織だからです。」

「え……そ、そうなんですか?」

「あ、そうだ…!」

私は先日、花屋の皆で食事をした時の画像を堤さんに見せた。
サトシ君やオーナーが向こうに行く前に、皆で集まった時の画像だ。



「もしかして、この子のことじゃありませんか?」

「あぁ……そうそう、確かこんな感じの子だった。」

「これが前のオーナー…奥様のことはご存知ですよね?
そして、この子がお子さんのサトシ君なんです。」

「そうだったんですか……
この子は山野さんの……」

堤さんは、そう言いながらサトシ君の画像をみつめられていた。
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