幸せの花が咲く町で
「そうだったんですか。
それはお困りですね。
でも、なっちゃん…いくらなんでも、あの部屋じゃ狭すぎるんじゃない?」

「香織さん、今のアパート、部屋いくつあるんだっけ?」

「え……六畳の二間です。
それと、四畳半の台所と。」

「だったら、なんとかなるよ!
ね?優一、そうしなよ。
香織さん達に一緒に住んでもらったら、私も安心だし、ここからだったら通勤もないに等しいし便利じゃない!」

「でも、まだご挨拶もしてないのに、そんなこと、篠宮さんのお母さんがお許しにならないんじゃないかな?」

「お母さんには、もう了承済みなんだよね?」

「え……あ、はい……」

そう言うしかなかったけれど、私は嘘がバレないかと心配で堤さんの顔をまっすぐ見ることが出来なかった。



「そうですか……
だったら、僕は別に構いませんけど……」

「え?」

「ほら、私の言った通りだろ?
じゃあ、来週にでも引っ越して来たら良いよ。」

「来週って、なっちゃん……」

「私達もそろそろ引っ越さないといけないから……
本当に助かったよ。
ここに香織さん達が引っ越して来てくれたら、こたにも話がしやすい。
これからここにはおばちゃんとそのお母さんが住むことになったからってことで、こたを向こうに連れて行くよ。」

夏美さんはリビングにいる小太郎ちゃんに気付かれないように、声を潜めてそう話された。



「急なことだけど、仕方がないよね。
どうせ、今月中には立ち退きだったんだもんね。」

「は、はい、まぁ……」

大変なことになった。
まんまと夏美さんの口車に乗ってしまって、本当に大変なことになってしまった。
だけど、もしも堤さんの家に住むことになったら、いつでも堤さんの様子がわかるし、そう言う意味では安心だ。
でも、引っ越すとなったらお金もかかるし、どうすれば良いんだろう?



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