幸せの花が咲く町で




「お先に失礼します。」


6時で私の仕事は終わり。
私はそれからスーパーに寄って買い物をして、そして帰宅する。



「ただいま。」

「おかえり。」


薄暗い部屋の中から、聴き慣れた声が返事をくれる。


二間しかないアパートで、私は母と暮らしている。
年老いた母は、昔、遭った交通事故の後遺症で足が悪いけど、身体はまぁまぁ元気だから家事は母がしてくれる。



着替えると、テレビを見ながら母が作っておいてくれた質素な夕食を食べる。
これといった会話もなく、ただお腹を満たすためだけの食事……



こんなもんかもしれないって思うことはある。
きっと、大半の庶民は、いつもご馳走を食べながら笑ってるわけじゃない。
でも、そういう家庭だってあるのは事実だ。
お金があって、皆が仲良くて、知らず知らずのうちに笑みがこぼれるようなそんな家庭はきっとたくさんあるはず。
うちは、それとは程遠いけど、そうなった一因は私にある。



お風呂に入り、襖一枚隔てただけの自分の部屋に引きこもる。
六畳しかない部屋は物で溢れ、足の踏み場もないほどだ。
これといって、することもないから、ついつい考え事をしてしまう。
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