幸せの花が咲く町で




「ここが僕のお家だよ~!」

小太郎が門扉を開けて、女性はそれについて中へ入った
僕は、玄関先で帰ってもらおうと思ってたのだけど……
やはり、今日のお礼を言って、お茶でも飲んでもらうべきなのか。
今日は掃除もしてないのに、よりにもよってなんでこんな日に……



「パパー!早く開けて!」

小太郎は玄関の前で僕を急かす。
仕方がない。
こうなったら、お茶でも出してから帰ってもらおう。
具合は悪いけど、そのくらいならなんとか出来るだろう。



「お家に帰ったら、手洗いとうがいをしないといけないんだよ。」

小太郎がそんなことをいうから、女性は小太郎の後について洗面所に向かった。
僕は、お湯でもわかそうと台所に向かったものの、やはりどうにも身体がだるい。



「僕のお部屋は二階なんだ!」

小太郎は、いつものように着替えるつもりなんだろう。
申し訳なかったが、それも女性に任せることにして、僕はリビングのソファーに深く腰掛けた。
本当なら横になりたい所だったけど、さすがにそれは失礼だと思い我慢した。



しばらくすると、着替えを済ませた小太郎と女性が降りてきた。



「お着替えしてきたよ~」

「すみません。
なにからなにまでお世話になって……」

「いえ、こんなことくらい、なんでもありません。
そんなことより……もしかして、御加減が悪いんじゃありませんか?」

「いえ…別に……」

素直に言えば良いのに、僕は強がって否定した。



「でも、顔が火照ってますよ。
お熱があるんじゃないかしら?」

「あ……実はちょっと風邪をひいてて……」

「やっぱり……じゃあ、横になって下さい。
それとも病院に行かれますか?」

「こんなもの…少し休めばすぐに良くなりますよ。」

「でも、もしも、インフルエンザだったら、小太郎ちゃんに移ったら大変ですし……」

「あ……」


今までは自分の心配だけで良かったけれど、小太郎のように小さな子供がいたら、そんなことは言ってられないんだと気が付いた。
小さな子供には、インフルエンザが命取りになることだってあるのだと。


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