エンビィ 【完】




――――ああ、そういえばアレもフランス語だった



すっかり忘れていたあたしは、あれから調べることも忘れていた。

人参スープを、上品に飲み干すユキノを一瞥する。



あの頃だったら、

屈辱感から尋ねることはしなかっただろうけど―――…




「“アンジュマリスィウ”」


「ange malicieux?」


「“アンジュマリスィウ”」




綺麗すぎる発音にイラッときて、言い直す。


だがそれが返って墓穴を掘ったので、咳払いをして早いところ話を戻した。



「どんな意味だったかしら?」



やはり、ユキノは知っていて、間髪入れずに答えは返ってきた。




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