エンビィ 【完】




秋風が紅葉をなびかせる。



なんて―――、

なんて、
相応しくないほど、綺麗な夕焼け空。



死人を迎えるには、綺麗すぎる夕焼け空に、胸元で一連のパールが不気味に揺れた。


より一層夕焼け空に近づく。


震える低いヒールが石段を登りきれたあと、黒一色に染まった世界にたどり着いた。そしてそれは、ごった返しながら口を開く。




“勿体ない”


口々に嘆かれるソレは、本当に耳障り。




「彼女が亡くなったということは、会社の全てを継ぐのは長男の伊織様ということだわ」


「彼女の花婿候補を狙っていた人は気の毒ね」



喪にふしているのは形だけで、会話は下品極まりない。

口許が弧に歪んだ。



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