一瞬の、夏。
プロローグ
「彩、お薬取りに行ってきちゃいなさい。」

お母さんの声がキッチンから響く。

「はぁ~い」

私は間延びした声で返事をし、素直に立ち上がった。

「あら、彩が素直に行くなんて、珍しいわね。雨でも降るのかしら。」

「お母さん、人聞きが悪いよ~」

「あら、本当のことじゃない」

「たまにはいいでしょ!行ってきまぁす」

扉を開けて、空を見た。

少し肌寒いけど、春はすぐそこだ。





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