あじさい~揺れる想い~
彼は私より一つ年上の高校3年生。

私が中学2年生の時から付き合っているから、もうすぐ付き合って3年になる。



この3年間で彼の優しさは全く変わらない。



むしろ、付き合った時より大切にされているような気がする。



「ゆかり、降りるよ」



浩平の匂いから解放された私は、彼に引っ張られるように電車を降り、いつものように電車を降りると繋がれた手は離される。



そして学校までの道のりをゆっくりと歩きながら、たわいもない話をすることすら幸せに感じる。





「手、繋ぐ?」



珍しくそう言って来た彼の顔を見上げると、真っ赤な顔をしていることに吹き出してしまった。



「な、なんやねん!」



私が笑ったことにさらに顔を真っ赤にさせて動揺する彼に、笑いが止まらなかった。

「なんで、いきなりそんなこと言うの?」



休日にデートする時は、普通の恋人たちがするように手を繋ぐが、学校まで一緒に行く時は手は繋ぐことはなかった。



きっと、同級生とかに見られると恥ずかしいから繋がないんだと思っていたのに、今日はどうしたんやろう?



私が顔を覗き込んで聞くと、彼は顔を逸らして、「なんでも!」と言って、乱暴に私の手を取って、歩き出した。



横に並んで改めて彼の顔を見ると、照れ臭そうに真っ黒な髪を掻き上げた時に見えたいつもは涼しげな切れ長の目も、少し焦っているように見えた。


彼のこんな焦った姿をみることは滅多になく、いつもとは違う彼に対してどうしたんだろうという思いと、こんな面もあるんだという新たな発見ができて嬉しい思いが二分していた。





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