あじさい~揺れる想い~


私は、浩平の熱を感じながら、彼の優しさをも感じていた。


ほんまにどんな時も真面目で、優しいんよな・・・。


我慢して我慢した末に抱いている今でさえ、荒々しさよりも優しさの方が勝っている。


快楽に溺れ、目を閉じると、真っ暗な中に、二人の息遣いだけがくっきりと耳に入って来た。

普段では絶対に聞くことができない声に、私の体がどんどん熱くなっていく。


気を抜いてしまうと、どこかに飛んでいってしまいそうだったので、必死にしがみついていた。





その時、ふと脳裏に浮かんだ人物に、体が強張ってしまった。



な、なんでこんな時に現れるの・・・・・・?



突然現れた鋭い視線の持ち主の姿を忘れようとすればするほど、私の方を見つめ、離れてくれなかった。


異変に気付いた浩平に、「痛い?」なんて気遣いをさせてしまって、自分が犯してしまった罪に苦しんだ。



浩平に抱かれながら、他の人のことを考えるなんて・・・・・・最低・・・・・・。



私は自分を責めながらも、浩平には「大丈夫」と笑顔で答えていることにさらに罪悪感が募った。



そして、情事が終わり、優しく抱きしめられている間も、浩平に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



――渡辺くん――



なぜあなたは私のことを見ているの?



私の中には彼に対する疑問ばかりが渦巻いていて、どんどんぬかるみに嵌まってしまいそうだった。









< 22 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop