【完】『道頓堀ディテクティブ』
宗右衛門町。

行政の登録では「そうえもんちょう」だが、地元では「そえもんちょう」と呼んでいた。

で。

大坂の陣の頃から宗右衛門町と呼ばれており、もとは遊廓があったらしいが、今はカラオケ屋に焼き肉屋、寿司屋に居酒屋、小料理屋…とうまそうな店ばかりが並ぶ。

穆と大二郎とまりあは、相合橋を渡ると、メモに書かれた位置に串揚屋のビルを見つけた。

その地下の階が例の女の店である。

「こんな場所にこんな店、いつの間に出来よったんやか」

ひとつ先の角を折れた先が、大二郎の行き付けのカラオケ居酒屋であった。

階段を降りて行くと、

「BAR 靜」

と書かれた看板がある。

「…ここやな」

穆がそのまま帰ろうとした。

が。

「たまには飲みましょうや」

大二郎が言った。

「悪いが一人で飲め。俺はまりあちゃん送るから」

しかし。

一切を無視して大二郎は、重厚な黒い扉を開けた。

「…いらっしゃいませ」

中は古風なカウンターバーである。

「三名様ですか?」

声を発したのは、翳のある臈たけた、胸元の開いた紫のイブニングを身にまとった美女である。

「ミントモヒートください」

大二郎が注文した。

「俺はウーロンハイで。あ、この子は未成年やから何か適当に」

穆はそう言って、まりあにガードをかけた。

カウンターの向こう側で、すでに女は酒の支度を始めている。

「お客さん方ミナミは初めてですか?」

新参者なのは分かっているようで、

「いや、知り合いがいい女がいる店があるって言うから」

穆は切り返した。

「またうまいことを」

女は笑顔を返しながらウーロンハイを混ぜている。

大二郎はすっかりやられてしまっている様子ぶりで、

「いやーこれは発見ですよ」

穆に目線を投げた。

「まぁミナミやからな、少なくとも東京よりレベルの高い美女は、いっぱいおるやろ」

酒場のジョークを飛ばしてみせる。

女は意に介するふりもなく酒を調え、

「お待たせしました」

それぞれにミントモヒートとウーロンハイ、まりあにはレモンスカッシュを出した。



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