【完】『道頓堀ディテクティブ』
穆の初会議の日。

進藤補佐官から挨拶を促された穆は、

「あくまでも自分は民間で、ただの一人の協力者ですから」

とのみ言った。

具体的な推察や言及は避けたのである。

むろん。

「あんな探偵ごときに」

という論があるのを知ってのことで、

(どこでどうして、そうなったのやら)

と穆は我が身の置かれた境遇を不思議がるところすらある。

「じゃあ断われば良いじゃないですか」

付き添っていたまりあは、疑問をぶつけてみた。

「下手に断れば、後ろ暗いことがあると言いがかられて疑われるやろ」

協力者として参加して、

「しかし解決まで発言はしない。これが」

賢明な生存策や、と穆は言った。

穆には穆なりの計算が働いていたらしい。

その夜。

穆とまりあは宗右衛門町の静の店に顔を出した。

東郷忠もいる。

「毎日いろんな展開で大変そうやな」

東郷がねぎらった。

「まぁ、ちょっと頼まれただけですからね」

「ところで」

と東郷は画家らしい目線で、

「ムクゲっちゅうのはよく、夏の茶席で飾られるらしいな」

「そうなんですか」

穆は耳を傾けた。

「で、お茶の師範なんぞはよく池田の植木屋とかから、枝を手に入れたりしてるらしいそうや」

「そんなネットワークがあるんですね」

穆はそこまで調べてはいなかったようで、

「ありがとうございます、今度ちょっと調べてみます」

と、ひさびさのキューバリブレを飲み干した。

< 65 / 82 >

この作品をシェア

pagetop