† of Thousand~千の定義
そして、

合図は、

なかった。

「灰となれぇええ――っ!!」

ただ、キマイラの火炎放射のほうが、予備動作が少ない。

吐瀉された猛火が、怒濤のごとく地表を舐めながら、私へと迫る。

先ほどの炎よりも遥かに範囲は狭いが、密度が桁違いだ。

(っ、速い……!!)

私の新しい力は、定義して『魔法』だ。

魔法は魔術よりもいっそう超常的現象を引き起こすことができるが、そのためには代償を契約対象へ捧げ、現象を望まなければならない。

私の中のイメージと代償がウリエルへと伝わり、それが執行されるまでのタイムラグがある。

ただ、息をするかのように炎を操るキマイラに比べて、手間がかかる。

「壁だ!」

だから初手は守りになった。

イメージを声に乗せながら、右手を大きく下から振り上げる。

その軌跡に炎が尾を引き、膨張する。

燃え盛る壁が泡沫の合間に出来上がり、二つの赤が衝突した。
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