せいあ、大海を知る
暦の上ではずっと前に秋になったけれど、まだまだ暑い日が続いている。カーテンを靡かせながら吹く風がとても心地良い。


『藤堂さんーー好きです。俺と付き合って下さい』

『よろしくお願いします』


お互いに照れて、顔を真っ赤にして、気持ちを通わせた。放課後の教室で、パタパタと揺らめくカーテンを横目に彼とみつめ合った。


授業が終わり、一人、また一人と生徒が帰宅するなか、私は外を眺めたまま自分の机に座っていた。


帰ろうかなと思っても、なんだかだるくてそんな気分にもなれず、ただひたすらにボーッとしていた。


そんな時、パタパタという足音と共に、彼が教室へと現れた。忘れ物でも取りに来たのだろうと、特に彼の存在を気にしていなかったけれど、なぜか足音は私へと近づいてくる。


疑問に思い視線を彼に移すのと、彼が私の目の前に立つのは同時だった。


そこで唐突に告げられた言葉。私も即答していた。


私も彼の事を好きになっていたから。


互いに意識しあっているのは分かっていたけれど、まさかこんなにも早く彼に想いを告げる日が来るとは思ってもみなかった。


彼が言うには、一人ぽつんと残る私を見つけて、今しかない!そう思って行動したらしい。
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