夏の夜長に世を思う
ジャズの音色

少しこぢんまりしたロッジのような外装と


室内から溢れる夕日のようなオレンジの照明。


なんとなしに入ってみるには


ちょうどいい人数の客など


少しだけ日常に疲れてしまった私には


とても魅力的に見えた。


午前2時という時間にもかかわらず


5人ほどの客がまだ残っている。


外からずっと見ていたら


店主と思われる初老の男性と目が合う。


ふわりという言葉がとても似合う


温かい微笑みを私に投げかけると


カプチーノを入れる作業に戻る。



不審者だと思われかねないということに


今更ながら気づいて顔が赤くなる。


「よし…!」


緊張と期待で胸を膨らませながら


アンティークっぽく切り出された木の扉を


ゆったりと押してみたのだ。

< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop