DETH
「ぎゃぁ゛ぁ゛あ゛ー!!」

何とも言えない叫び声を上げたその男は、血だらけになるお腹を抑え、宙に浮く刃物を見て怯えている。

誰もいないはずの公園で、刃物だけが宙に浮く…
それから逃げようと必死に走る男の姿が情けなく思えて、俺は更に刃物のスピードを上げた。

選択したのは“事故死”

どうやら、場所によって選択出来るのが決まっているらしい。
他人の命より自分の命を選んだ俺は、完璧狂っていた。
もう人を殺す事に罪悪感なんて無い。
俺はこれをただのゲームとしか思っていなかった…

男が逃げても逃げても刃物は追い掛けてくる。
そして男は無我夢中で道路に飛び出した。

その瞬間、クラクションが鳴り響き、止まり切れなかった大型トラックが勢い良く男にぶつかった。

ガシャーン――――!!

何とも言えない衝撃音と共に、頭がグチャグチャになり、手や足がいろんな方向に曲がった男が地面に叩き付けられた。

トラックに乗った男もまた、フロントガラスに顔ごと突っ込み、丁度割れたガラスが両目に突き刺さっていた…

恐らく、二人とも死んだだろう…

俺は今、二人も人を殺してしまった。
それもゲームの中で…

スタートから30分経過。
まさかあんな形で二人いっぺんに殺してしまうとは…

それに…人ってこんなにもあっさりと死んでしまうもんなんだ…と思った。

こんなスリルを味わったのは初めてだ。

俺が求めていたモノ…

そう、これまで気づかなかったが、今では十分に分かった気がする。
俺は今までやっていたちっぽけなゲームなんかより、現実と架空の世界を結び付けたゲーム『DETH』の様なモノを求めていたんだと…

< 37 / 46 >

この作品をシェア

pagetop