幸福猫
教会の扉の前に居たのは杖を付いた優しそうなおばあさんだった。お婆さんは猫と同様、床を軋ませることなく歩いてきた。

「えっと・・・」

俺は自分に向かって歩いてくるお婆さんにどう挨拶をするべきか悩んでいるとお婆さんは優しい笑みで微笑んだ。

「こんにちわ。っと言ってももう直ぐ今晩わね。この教会で人に会うのは何年ぶりかしら。何かご用でもおあり?」


「あ、いえ。急に雨が降ってきたので雨宿りをさせて貰おうかと・・」

お婆さんは猫を膝に乗せ、俺の隣に腰を下ろした。

「雨宿り?この教会に・・?そう・・。」

俺が雨宿りをこの教会でしているのが珍しいのか、お婆さんは少し驚いていたが直ぐに悲しそうな笑みで俺を見た。

何故だかその笑みが嫌で、これ以上は見ていたくなくて俺は話を変えることにした。

「お婆さんはここの教会の方か何かですか?」

「えぇ。もう沢山の時間、ここに居るわね。お陰で猫ちゃんとも仲良しよ。お話もできるわ。ねぇ?ムーン。」

そう言ってお婆さんは愛しそうに膝の上で丸くなってる猫を撫でた。

「この猫、ムーンって言うんですか?」

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