豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


自分のアパートに帰っても、今日の出来事が頭の中を占めていた。


もしわたしのせいなら、なんとかしなくちゃ。
でもどうやって???


ダイニングテーブルのコンピュータに目をやる。
一向に書けない、恋愛物語。


「はあ、問題山積み。人生最大のピンチかも」
光恵は眼鏡をとって、両目を手で押さえた。


そこにスマホが鳴っているのに気づいた。光恵は鞄から取り出すと、画面を見る。バイト先の塾からだ。


「はい、もしもし」
「もしもし? 皆川さん?」
「はい、おつかれさまです」


時刻をみると、ちょうど夜の授業が終わる頃。どうしたんだろう。明日バイトを入れてほしいっていう話だろうか。


「今、話してもいいかな」
「はい」
「実は、国語IIIを担当している溝山先生が、来月末で退職するんだ」
「そうなんですか?」
「そう、おめでた」
電話の向こうから、困ったような笑い声が聞こえた。


「それでね、皆川さんにその気があるなら、うちで正式な講師として働いてもらえないかと思って」
「え!!?」
「皆川先生、生徒に人気だし。今の時給ベースを崩さない感じで、お給料出せるから。もちろん福利厚生ついてるよ」


畳み掛けるような言葉に、光恵は戸惑った。


「あの、でもわたし……」
『仕事があるんです』と言いかけて、その言葉を飲み込んだ。


『先に進むのも、とどまるのも、全部自分の選択』
その言葉が頭に浮かんだ。


「あの、しばらく考えさせてください」
光恵はそう答えて、電話を切った。

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