豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


孝志はうなだれて、稽古場の壁によりかかった。


俺はプロで、こんなことで駄目になったりしない。
大丈夫だ。きっと大丈夫。


目を閉じて、自分に暗示をかけた。


「孝志」
ゆうみが隣にいた。


「大丈夫?」
「ああ」
「練習、今夜付き合おうか」
「悪いよ」
孝志は首を振る。


「いいの。時間あるし。それにわたしのときも、孝志に助けてもらったから」
ゆうみはにこりと笑いかける。


「悪いな」
「いいんだって」
ゆうみは安心させるように、孝志の腕を軽く叩いた。


目を上げると、輝が孝志を見ている。


あいつ笑ってる。


「俺も佐田さんに負けませんから」
輝の声が、頭の中にこだました。


< 171 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop