豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


と思ったら、違うのか?


完全に気を緩めて、キットカットをもぐもぐとしながら、バスタオルを外して下着をつけていると、突然玄関から「ピンポーン」と音がした。


「え!? まさか……」
ひどい格好の光恵は、慌ててタオルを拾い上げ、身体にまきつけた。


「ちょ、待って……」
光恵は玄関に向かって声を上げた。


キットカット食べちゃった。
どうしよ。
ま、しょうがない。新しいの買ってあげよう。


光恵はジャージに着替えながら、ふくれる孝志を思い浮かべた。自然と笑みがこぼれる。


「はあーいい」
光恵は濡れた頭をバスタオルでごしごしと拭きながら、玄関の扉を勢い良く開けた。


「皆川光恵さんですね」


そこに孝志は立っていなかった。五十を過ぎたくらいの中年女性。丸い顔に、ゆるやかなパーマ。人の良さそうな顔をしている。


「……はい」
「わたくし、ダイヤモンドプロモーションの志賀ともうします」
「……はあ」
「佐田孝志のマネージャーをさせていただいております。あの……少しお話があるんですが、あがらせていただいてもいいでしょうか」


志賀はにこやかに、そう訊ねた。

< 70 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop