豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
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部屋で一人、コンピュータとにらめっこをしている。深夜十二時。光恵はホットミルクを手に取って一口飲んだ。
何も思い浮かばない。どうしたらいいんだろう。
光恵は顔を両手でぱしんと叩いた。
「わたしはプロ! 絶対に書ける!」
『佐田さんが舞台の中央に立ってるだけで、なんか世界が広がる感じがしませんか?』
輝が目を輝かせて言っていた。
その気持ちはよく分かる。そうやってこれまで書いて来たのだから。
でも今は、孝志の姿を想像するだけで、意識が彼を遮断しようとするのが分かる。彼の笑顔、言葉を思い出すのを恐れている自分がいる。
「ああ、重症」
光恵は机につっぷした。
「あんな小デブ、気にしてどうするんだ。小デブで精神年齢が小学生。しかも、低学年だよ!!? いっちょまえに、あんなキスするから……」
ぶつぶつ言いながら、そっと唇の側、彼の唇が触ったところを指でなぞる。
「なんだよ、もう……」
光恵は目をぎゅっとつむり、口をへの字に結んだ。
光恵はポケットからスマホを取り出し、肘をついたまま写真のフォルダを開けた。
「あはは、すげーデブ」
光恵はダイエット記録を指でスライドしながら見始める。
「ただの小デブじゃん。何、有名俳優気取ってんの? 本当はこんなに顔の周りにお肉がついてんのに」