豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


「うちの事務所の、中山ゆうみ、ご存知ですか?」
志賀が訊ねた。


「もちろんです。『プラチナガール』で主演された」
三池が答える。


「そう、その彼女なんですが。知名度はあがりましたが、まだ舞台にたったことがないんです。そろそろ活躍の幅を広げたいという事務所の意向がありまして、佐田が出演するこの機会に、彼女も舞台デビューさせられないだろうか、と考えているんです」
「はあ……」
三池があいまいに返事をした。


「このウェイトレスの役を、中山ゆうみにやらせていただけないでしょうか。もう少し彼女をクローズアップするように、脚本を改訂していただいて……」
「そう……ですか」
三池が問うような顔で光恵を見る。


「これはあくまでお願いであって、強制ではありません。中山はプライベートでも佐田と親しいですし、役者として尊敬もしているようです。彼の側でなら、うまく成長できるのではないかと思ってのお願いです。もちろん、事務所としては協賛として、できるかぎりのことはいたしますし、こういってはなんですが、幅広い観客層が劇場に訪れることになるでしょう。それは劇団としても飛躍のチャンスなのではないですか?」


志賀は光恵の方を向いた。


「皆川さんなら、この名がないウエイトレスを、もっと魅力的に描くことができると思います。お願いできないでしょうか」


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