アメット

 朝食と昼食が一緒ということもあり、並べられている料理の種類が多いが、一品一品が少量なので数の割には量が多いということはない。

 それに短時間の間でこれだけの種類を作るということは、それだけクローリアの料理の腕が上がった証拠であり、シオンは感心してしまう。

「先に、食べていて下さい」

「クローリアは?」

「ある程度片付けましたら、頂きます」

「わかった」

 シオンはフォークを手に取ると、最初に手を付けたのは彩り豊かなポテトサラダ。

 以前クローリアが大量のポテトサラダを作って以来、この味に嵌ってしまった。

 そのことを知っているクローリアはシオンに喜んで貰おうと、このように定期的にポテトサラダを作っている。

 フォークで掬い、口に運ぶ。

 感想は、一言で言えば美味しい。

 シオンの味覚にマッチした味付けで、濃かったり薄かったりしないバランスのいい味付けだ。

 心の中で「美味い」と何度も呟きつつ、シオンはポテトサラダを口に運ぶ。

 するとあっという間にポテトサラダを完食してしまい、次の料理――温野菜が付け合わせに添えられている目玉焼きを食べる。

 この目玉焼きは、半熟。

 勿論、シオン好みだ。

 二個の目玉焼きをフォークで切ると、パンの上に乗せる。

 そしてそのまま一気に目玉焼きごと齧ると、半熟の卵が流れ出す。

 それを間髪入れずに吸い込み、再度パンを齧る。

 人前ではきちんと別々に食するのだが、クローリアには気を使うこともないと、このような食べ方を行う。

(そういえば、最近……)

 ふと、思い出すのは自身の家事。

 クローリアが家政婦として来た当初は、あれこれと手伝い、時折自分が料理を作っていた。

 しかし今は手伝うことは殆どせず、すっかりクローリア任せ。

 料理のレシピが増えたのも勿論だが、彼女が作る料理が何倍も美味しい。

 その結果、シオンは自分で作らずクローリアが料理を作るのを待つ毎日。

 一方クローリアも、シオンの口から「美味しい」と言われるのが楽しみとなっているのだろう、最近ではレシピのアレンジに挑戦している。

 だが、そのレシピのアレンジはなかなかの曲者らしく、調味料の量を間違えてはとんでもない料理を完成させ、へこむ日々であった。

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