氷がとけるように。
「予算より安く買えて良かったわね」


夕御飯を食べながらお母さんに今日の事を話した。


「うん、来週の土曜日に納車してくれるって」


「工藤さんにお礼しなさいよ。わざわざ、あんたに付き合ってくれたんだから」


「…わかってる」


何かしてもらったらお礼する。
挨拶はしっかりしなさい。


昔からお母さんが言ってた言葉。


近所付き合い、人付き合いの基本らしい。
お母さんの話を相槌しながら夕御飯を食べ終えた。


テレビのチャンネルを取られた私は部屋に行く。


椅子に座りバッグのポケットから小さい紙を取り出した。


工藤が私に渡した名刺。


表には会社名と氏名、2つの電話番号。
裏には手書きのメールアドレス。


携帯を取り出し登録し、メール文を書く。


『今日はありがとうね。
車の事で何かあったら相談します。
木村』


簡潔かつ愛想ないメール文。


工藤の隣にいる由紀さんの笑った顔が浮かび、何を書いていいかわからなかった。


今の時間は8時半。


遅い時間帯だと迷惑だから愛想ないメール文のまま送信した。




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