依存症人生1

ヒロ君との再会

家出騒動も、学校の先生が間に入って収まり、
それからも秀樹との幸せな日々が続いた。

その日も、母が夜、スナックの仕事に出かけた後、彼が
家にやってきた。

「友達、連れてきたけど、良い?
 俺の親友のヒロ。」

息をのんだ。
あの・・・sちゃんの彼氏だったヒロ君。
駅に迎えに来てたヒロ君。
憧れてたヒロ君。

彼は礼儀正しく挨拶して頭を下げた。
私は、二人を招き入れた。

この時まで、ヒロ君のことは忘れていた。
秀樹との幸せな日々に夢中だったから。
でも・・・手の届かないと思っていた人が目の前に現れた。

私の部屋にいる。笑ってる。私と話してる。

sちゃんの話をした。
転校で別れたらしい。連絡も取っていないと。

話してみるとヒロ君は、とても優しくて…。
あの時の淡い恋心が呼び覚まされようとしていた。
ダメなのに。今は、秀樹の彼女なのに。

深夜…気が付くと秀樹はスヤスヤ眠ってしまった。
私とヒロ君は二人で・・・変な空気。
思わず、言ってしまった。
「私、あの時からヒロ君に憧れてたんよ。」と。

だんだん、怪しい雰囲気になった。
どちらともなく、キスしてた。

気持ちと行為は盛り上がってきたけど…
お互い、後ろめたさがあって…。

「最後までは、さすがにできんよね。」
そこに彼が寝てますから。悪いと思わなかったわけじゃない。
けど、手が届かないと思ってた人と甘い時間を過ごして…
止められなくなってた。後のことが考えられなかった。

口でヒロ君のモノをくわえた。
それは、裏切り…彼に対する犯罪だと解っていた。

その後も起きない秀樹を見ながらヒロ君が言った。
「今日のことは絶対、秘密。言わないで。俺たち、ダメになる。」
「わかった、言わない。」

約束した。
翌日、ものすごい罪悪感に見舞われた。
でも、後悔はなかった。

秀樹に真実を話そうと思った。
でも、ヒロ君のことを考えると話せなかったし…
正直、秀樹を手放したくもなかった。

と、その日の夜、すごい剣幕で秀樹が来た。
それはすぐ、悲しげな様子に変わり…

「ねぇ、なんで?なんで、裏切ったん?」
「なにが?」
「ヒロのこと。あいつ、全部、話して謝ってきた。
 おまえ、黙っとくつもりだったん?」

ほれ、来た。男の友情。
しゃべったもん勝ちか、こういうことは。
全責任、私?

責任の取り方が、解らなかった。
自分のしたことの重大さは解っていたから…
何をもって償えるのかが、解らなかった。

だから・・・
「別れよう、ごめん。」
としか、言えなかったんだ。

これ以上ないくらいショックを受けてた秀樹の顔が
更にショックで歪んだ。

だって・・・許されるなんて思ってないから。
それ以外、言えなかったんだ。
< 5 / 66 >

この作品をシェア

pagetop