~天使ロード~
それから数分後…莉央が戻って来た。


「莉央、おかえりー!」


「うん…ただいま」


莉央の声量はあからさまに元気がなく、表情が一変し"見てはいけないものを見てしまった"というつぼらな瞳を浮かべている。


「どうしたの?」


「多分見間違えだと思うから気にしないで!」


「余計気になるんだけど…」


「うん…実はねさっき見ちゃったの
佐藤くんがぐったりして、担架で運ばれている所を」


やっぱりね、って想像と一致していたのにも関わらず…佐藤くんが担架で運ばれているのを知って、今すぐ会いに行きたくなった。


「そうなんだ…」


私は表情を曇らすことなく、平気な顔で言う。


「いいの、美桜はそれで?」


「いいのいいの!どうせ大したことないだろうし!
それよりパンケーキ食べに行こ!!
駅中に美味しいパンケーキ屋さん見つけたんだ」


「よく平然と装えるよね、美桜は…
もしかして知らなかった?
佐藤くん、病気患ってるんだよ?
そこまで詳しくよく分からないけど、美桜佐藤くんの傍にいてやりなよ!
私は大丈夫だから」


「でも…」


「私は本当に大丈夫!うちら帰宅部なんだし明日でも食べに行こ?」


「そうだね!何かごめんね…」


「じゃあまた明日!!」



莉央はそう言いながら、荷物を持って教室を出て行った。


莉央はどこか切なさそうで、今触れたら氷のように凍ってしまう冷たさなんじゃないかと思う。



私は莉央の思いを噛み締め、保健室に向かう。
< 41 / 293 >

この作品をシェア

pagetop