声を聞くたび、好きになる

 親戚付き合いもほとんどない中、会話のない家庭でまともなコミュニケーション能力を育めなかった私は、そのまま成長してしまった。

 クラスには必ず一人人気者がいて、私もそういう風になりたいと憧れたこともあるけど、元々の性格が違い過ぎて無理だと思った。

 それに、好きなアニメを通してモモという友達もできたので、学校生活は楽しかった。大人になるまでは、それで問題ないと思っていた。


 私が中学に入学する頃、何を思ったのか両親が別れることになった。驚きも悲しみもなく、ただ、漠然とその事実を受け入れていたけど、私の頭に真っ先に浮かんだのは幼なじみの流星のことだった。

 親が離婚するということは、私はどちらかについていかなきゃならない。そうなれば、学校だけじゃなく家も引っ越さなければならなくなるかもしれない。
 
 ここを離れたら、流星と会えなくなってしまう……!それだけは絶対に嫌だった。

 父か母、どちらかと別れて住むことに対してはそんなに抵抗がなかったのに、流星のことだけは簡単に考えられなかった。

 結局、私はお母さんに引き取られることになったけど、父が出ていくことで話はまとまったので、私とお母さんは今まで住んでいた一軒家に残れることになった。おかげで、流星とは離れずに済んだ。
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