あと、11分
でも、でも、でも、それでも俺は───シキを、覚えてる。
シキを知ってる。
世界中の人がシキなんていないって否定しても、俺だけは、彼女を信じたい。
ここにいるんだって。
シキは、ここにいるんだって。
「───なきゃ、」
「え?」
ぽつり、と声が漏れる。
その声はあまりに小さくて、か細い、迷子になってしまった子供みたいな情けない声だった。
「探さなきゃ、アイツを、見つけないと……」
「スイ?ねえ、スイ、落ち着いてシキなんて人、いないよ」
引き留めようとする夕雨の手を払って、俺は言う。
「───いる、シキは絶対にいるよ」
俺は震える手をぎゅっと握りしめて、走り始めた。