10円玉、消えた
第七話 長期休暇にて
朝8時、竜太郎はゆっくりとベッドから起き出した。

リビングへ行き、TVを点ける。
コメディアンたちが朝からガチャガチャとやっていた。

チャンネルを変えると今度はゴールデンウィーク関連のニュースだ。
お馴染みの、ごった返した空港ロビーや新幹線ホームの映像である。
竜太郎はうんざりしてTVを消した。

朝食はいつもと同じくトーストとコーヒー。
食べながら新聞を読む。
こんな朝をもう何度繰り返したことだろう。

竜太郎は里美がいないことにまだ慣れていない。
時々ついクセで「おい、里美」と呼んでしまうこともある。

今朝もそれを一度してしまった。
竜太郎は思わず苦笑し、いい加減に慣れないといかんな、と思った。

それにしても新聞紙面も“連休連休”だ。
この時期は仕方がないことだが、いまの竜太郎にはかなり鬱陶しく感じられる。

くそっ、俺だって本来なら里美と楽しく過ごすはずだったんだ。
ついボヤきが出てしまう竜太郎であった。



そのとき携帯が鳴る。
またも“公衆電話”からだ。
つい先日もかかってきたばかりだった。

竜太郎は今回も無視した。
里美からだと思っているため、どうしても出る気にはなれないのだ。

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